扶桑社『越境する本格ミステリ』に関して
[2003/07/16記]
すでにご存じの方もいるかもしれませんが、今年の4月末、扶桑社より『越境する本格ミステリ』(小山正・日下三蔵・監修、1,429円税別、ISBN4-594-03949-9)という本が刊行されました。この本は、「小説だけが本格じゃない!」というコピーが付けられた「非小説」本格ミステリ完全ガイドブックです。要するに、映画、TV、漫画、ゲームといったジャンルに展開された本格ミステリを新旧洋邦取り混ぜて紹介しているわけです。
この本の企画自体は面白く、私自身も、サイト作成の資料として使用できるだろうという考えの元、さっそく購入いたしました。
驚いたのは、帰宅して本を紐解いた後でした。邦画カテゴリに、もちろん「明智小五郎映画&TVの世界」(102ページ)という項目がありました。その中の、「明智小五郎映像化小史」(107ページ)を開いた時です。欄外に、次の文章が書いてあるではありませんか。
※明智小五郎の映像化リストに関しては“?人の明智小五郎”
http://www.asahi-net.or.jp/~KF2T-MRKW/akechi/media/akechi.html参照
驚きました。
私がこの本の存在を知ったのは、書店で偶然に見かけ、手に取ったからで、それがなければいまだに知らなかったわけです。その本の中に、私のページの、それもトップではなく直接のデータページへのアドレスが資料としてしっかりと記載されているのです。
これまで、本ページでも紹介しましたように、いくつかの雑誌・新聞などでこの『明智探偵事務所』のことは取り上げられました。それ自体は、見てくれる人が増えるわけですから、よほどのことがない限りは問題ありません。しかし、ページのリンクと違って、お金が発生する書籍などの紙媒体に紹介する場合は、必ず事前連絡をくれるものでしたし、媒体によってはキチンと掲載誌を送付していただけるはずなのです。
今回は、その最低限なされるはずの「掲載許諾」すら取らずに、リンク(紙媒体に載せる場合も同様です)は必ずコーナートップにというのも無視して、直接データページを載せていました。これは見過ごせません。別件で連絡を取っていた某社の編集に、このケースを話したところ、それはありえないとまで言われました。私自身、PC誌での掲載で、URLを出す場合は許諾を取らないといけないことはよく分かっています。対象のページが、許諾の必要なしで掲載してもいいよ、と言っているなら別ですが、本サイトでは、基本的にリンクフリーですが、商業的な媒体への掲載には必ず事前連絡を、と謳っています。それを無視された形で、すでに発売から3ヵ月近くが経過しているわけです。そこで、扶桑社の書籍編集部への問い合わせアドレスへ、次のメールを送信いたしました。(名前はペンネームにしてありますが、実際は本名で出しています)
扶桑社 書籍編集部 御中
初めまして。
私は、『明智探偵事務所』などのWebページを制作・展開しているフリーライターの夢野と申します。
この度、御社に問い合わせのメールを出させていただきますのは、件名にあります一冊の書籍についてです。この本は、奥付によりますと今年の4月に発売されたようですが、つい最近まで、存在を知りませんでした。偶然、書店で見かけまして、資料にもなるかと思いさっそく購入させていただいたのですが、本文を読ませていただいて唖然と致しました。
「明智小五郎映画&TVの世界」という章において、107ページの欄外に、以下の文章があるではありませんか。※明智小五郎の映像化リストに関しては“?人の明智小五郎”
http://www.asahi-net.or.jp/~KF2T-MRKW/akechi/media/akechi.html参照私は、この書籍に関しましては、自分で偶然に手に取るまでは、知りませんでした。
それなのに、私が手間ひまかけて作った資料の一ページが、何の許諾もなく勝手に引用されているのです。申し訳ありませんが、この項を担当されているライターの方とも面識はありませんし、編集者からの問い合わせすらありませんでした。
これは一体どういうことでしょうか?
さらに申しつけ加えさせていただければ、私自身もライターをやっており、この本が出る少し前の3月中旬、河出書房新社より発売されたばかりの『文藝別冊・江戸川乱歩』におきまして「映像で観る乱歩作品の魅力」という一文及び資料を夢野みさを名義で書かせていただいております。資料を勝手に引用されるくらいなら、私自身もライターとして書かせていただきたかったです。(特に、このライターの方が書いた天知茂の明智小五郎に関しては、完全に事実誤認と思われる間違った記載もありますし……)
それはともかくとして、少なくとも出版物にURLなどを掲載する場合、許諾を取るのは出版社として当たり前のことではないでしょうか? 私自身、ライターとしてはパソコン雑誌をメインでやってきたため、このような場合の許諾をしっかりすることは心得ておりますし、私が構築しております「明智探偵事務所」はすでにいくつかの新聞・雑誌などで紹介されておりますが、いずれもきちんと事前連絡がありました。もちろん、紹介していただくことは悪いことではないですし、快諾させていただいております。ただし、その場合もトップページのURLを書くことが前提です。特に私のページが紹介されたわけではない「週刊文春」でさえも、私のページを資料として使うにあたり、事前連絡をいただき、さらに掲載誌、いろいろお話をしたことに対する謝礼をもいただいたくらいです。
更に今回、御社の書籍に勝手に引用・記載されたURLは特定のページでした。アクセスしていただければ分かりますが、そこは現在「Not Found」になっています。といいますのは、この度私は独自ドメインを取りまして、一部コンテンツを除いて移動を開始しており、その対象にしていたからです。こういう可能性もありましたので、掲載を許可するとしてもトップページ(この場合は、http://www.asahi-net.or.jp/~KF2T-MRKW/akechi/ までで)だったはずです。これでしたら、コンテンツ移動の旨を記載しますので、新URLになっても混乱なくアクセスできたはずです。長くなりましたが、このことに関しまして、御社の担当者の納得のいく説明・謝罪をいただきたく、メールした次第です。
ただ、私自身もライター業をしており、仕事の状態によりましては時間帯が不規則になっておりますので、ご返答はまずメールでいただきますよう、よろしくお願いいたします。なお、この件に関しましては、私のページといたしましても黙っておけませんので、この抗議メールを出したことをページに記し、その対応に関しましても掲載したいと考えております。
御社の誠意ある対応を期待いたします。2003年7月15日
「明智探偵事務所」ページ製作・運営者 夢野みさを
明智探偵事務所 http://sb-p.jp/oishi/akechi/index.html
はじめに http://sb-p.jp/readme.html
7月15日の11時過ぎに出したのですが、その返事は早く、14時少し前にメールが届き、その直後に直接お電話もありました。ちょうど起きていたので対応できましたが、まずはメールのやりとりにして欲しかったです。ただ、その対応は比較的悪くなかったため、納得することにいたしました。返事も、掲載許可をいただきましたので、以下に引用します。(こちらも本名になっているのはペンネームにしてあります。なお、担当者名は伏せました)
夢野 みさを様
このたび、『越境する本格ミステリ』において、URLの無断引用があったとの件、
大変申し訳ありませんでした。
「はじめに」のリンク指示の箇所を経由せずに、そちらのHPにアクセスしていたもので、
そちらの要請事項に気づかず、通常の参照書籍、雑誌紹介と同様の認識で、
掲載してしまった次第でございます。
不快な思いをさせてしまった点、同好の士としても大変申し訳なく思います。
今後、このようなことが起きないよう、気をつけたいと思っております。
ただ、ご了解いただきたい点として、本企画における明智紹介に関しては、
そちらの運営されておりますサイトを直接参照のうえ執筆されたものでは
ございません。明智DVDボックスなどでも執筆に関わった推理作家の方が、自身の
責任のうえで書かれたものです。下の「参照」という部分は、かねてより貴殿の
運営されておりますサイトの素晴らしさ・網羅的内容に敬服していた担当編集が、
一覧表を載せる紙面的余裕がなかった分、「より詳しい情報を知りたい人は
ぜひこちらを参照してほしい」との意味あいで、付加したものです。
ライターの方には、一切責任がない点、ご留意くださいませ。
内容を引用した、という認識はなく、あくまで紹介のつもりでした。
ネット上の約束事に疎く、大変ご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。
なお、もし重版が掛かりました際には、URLを訂正させていただきます。
また、今後、同様の企画がありました際には、是非ご協力いただければ、幸いに存じます。
以上の点、お含みおきのうえ、何とぞご寛恕くださいませ。扶桑社 書籍編集部 ** *
正直、私が働きかけるまでまったく接触がなかった点など、承服しかねる部分もあるものの、きちんと対応していただけたと感じましたので、今回の点はこれで了解することにいたしました。
ただ、この本の本文中に事実誤認ではないかと思われる個所がありましたことだけは記しておきたいと思います。
天知茂の明智小五郎について触れられたページ中、105ページ上段11行目にある文章です。
…(前略)…「明智の変装」もそうだ。…(中略)…時には浪越警部(荒井注)にまで化けるというのだから、スケールで原作を凌駕している。
一部の掲示板でどなたかが質問されていたのはこの本を読んでのことだったのか!と納得しました。この文章を書かれたのは、キングレコードから発売されたDVDでもいくつかの解説を書かれた作家の方ですが、これは間違いじゃないでしょうか?
私が記憶する限り、天知茂の明智小五郎が波越警部に変装したことはなかったと思います。もう一つ言えば、天知茂主演作では、「波越警部」で「浪越警部」ではありません。なお、その後のシリーズで、坂上二郎の波越警部が恐怖王に変装されたことはありましたが(北大路欣也主演『怪しいメロディの美女』)。また、稲垣吾郎主演作では、きたろうが「浪越警部」を演じています。