失われた十年を見直すべき時

伊藤惇夫『政党崩壊 永田町の失われた十年』(新潮新書)
浅川博忠『平成永田町劇場』他(講談社文庫)

2003/10/07、書き下ろし

『政党崩壊』表紙 小泉改造内閣がスタートし、10月10日にも衆議院解散、11月には総選挙が予想される中、10月5日の日曜日に民主党と自由党が合併大会を開催した。いわば、第三次民主党のスタートだ。本来なら、この大会が派手に報じられ、与党に対抗できる、政権交代可能な野党としての最大のアピールチャンスになるはずだった。だが、明けて6日の新聞各紙は、「藤井総裁更迭」と「田中眞紀子元外相」に紙面を割いてしまい、民主党・自由党の合併大会は、その次の扱い。メディア戦略においても、小泉自民党が一歩先んじる形になった。田中眞紀子はともかくとして、藤井総裁問題は選挙を目前に据えたパフォーマンスの面もあると思う。それは、当初から予定されていた民主・自由の合併大会の日に行うということから見ても明らかだ。

 しかし、果たしてこんな政治がいつまでも続いていてよいのだろうか。

 現在の社会の混迷の根源は、旧態依然の社会・政治システムの構造そのものにある。そういう意味で、「構造改革」は必要なのだが、小泉首相の唱え、実行しようとしていることが果たしてよいのかどうか。そして、それが自公保の連立政権で実行・実現可能かどうか。はなはだ疑問である。なぜといって、その諸悪の根源を断つために一番良い方法は、長年日本の政権を担ってきた自由民主党の下野、そして新政権による構造改革だからだ。

『平成永田町劇場』表紙 いまから十年前、そのチャンスは巡ってきた。「うそつき解散」とも呼称された解散総選挙において、宮沢自民党は過半数を割り込み、自民党を離党した新生党が軸となり、七党一会派による非自民連立政権が樹立されたのだ。この政権が、その後、数年間にわたって政権を担当していれば、明らかに日本の政官財の構造は改革された。それまで実権を担ってきたグループが外れるため、大胆な改革もしやすくなるのだ。長年実権を担っていれば、そこに既得権益が生じ、改革の手も甘くなってしまう。確かに、小泉首相の場合、これまでの総理大臣と違ってそういう権益は少ないのかもしれない。しかし、自民党という箱の中にいる以上、それはなかなか崩れない。そこで大胆な変革を行うための必須条件として「政権交代」が提示されてくる。ただし、それは細川連立~羽田連立に至る短期間であっては意味がない。結局、自民党も自浄されないまま、政権復帰を果たしてしまった。そのA級戦犯はさきがけ、社会党(当時)だ。そして、社会党を連立から追い出すきっかけを作ってしまった小沢一郎氏にもある。小沢氏はその後もミスを犯してしまう。新進党の解党、そして自自(公)連立だ。ただし、いまの小沢氏の発言を見聞きするにあたり、その反省を踏まえているようにも思われる。私自身は、小沢氏とは異なる見解もあるが、大局的視野に立った場合、いまはまず、政権交代を第一義に捉えたい。

『人間 小泉純一郎』表紙 マニフェスト、という言葉ばかりが踊ってしまっているが、問題はマニフェストではない。マニフェストは、いわば政権公約だから、これまでもあったはずなのだ。最近、公明党も「一番最初にマニフェストを出しているのはウチだ」と豪語してパンフレットを配布しているが、そんなのは何の自慢にもならない。そもそもないほうがおかしいのだ。自民党の場合は、右から左まであらゆる人材が揃っている「総合病院」ゆえに、トータルな形での政権公約を出してしまうと逆に選挙を闘えない、という事情があるのは明白。今回も、必ずしも小泉純一郎の公約(マニフェスト)には賛成できないといいつつ、総裁選では小泉支持に回るといった不可思議現象が起きていることでも明らかだ。意見が異なるのならば、支持しなければいいのに、国民的人気(それもまやかしに見えるが)にあやかって、選挙対策で総裁に選ぶなどとは言語道断。それだけ、短い期間であったにせよ、野党の悲哀を感じたのだろう。ここで、有権者が奮起しなければ、自民党は生まれ変わることはない。

 いささか前置きが長くなったが、ここでぜひ読んで欲しいのが伊藤惇夫氏の『政党崩壊』(新潮新書)である。伊藤氏は、自民党本部から新進党本部、太陽党、民政党、民主党の事務局長に就任して、政界の表も裏も熟知している人物だ。彼が、手元に残されたメモから、この十年間の政界の動き、政党の崩壊の様子をまとめたものである。いまや、政党は自己崩壊を起こしている。自民党がもはやダメなのは分かりきっていても、それに変わりうる政党が存在しない。非自民連立政権から発展した新進党、そして民主党は、自民党に変わりうる政権の受け皿だったはずだが、いまだにその立場になっているとはいえない。世論調査でも、いまだに自民党がダントツのトップ。ただし、支持政党ナシが相変わらず多数を占めるので、決して自民党が磐石、というわけではない。多くは政党というものを見放しているのだ。しかし、現在の選挙制度は「政党本位」。二大政党制を目指している。本当はお金の問題からあらゆる腐敗・汚職を払拭した、総合の「政治改革」が目的だったはずが、いつの間にか「選挙制度改革」=「政治改革」にすり替えられてしまった。その、政治家と有権者との認識のずれが修復されないまま、現在に来ているのではないか。そして、有権者が政治、政党に期待できなくなってしまった最大の原因は、この十年の政治の混乱、これにつきる。本書を一読すれば、その経緯がよく理解できる。そして、同じ過ちを繰り返さないためにも、政治家も政党も生まれ変わらなければならないし、有権者も意識を改革せねばなるまい。

小説 角栄学校 (講談社文庫) 本書と同時に、政治評論家・浅川博忠氏の一連の著作も読んでもらいたい。その最新刊『平成永田町劇場』(講談社文庫)は、小泉政権樹立から、先日の総裁選の直前にいたるまでの様子を手に取るようにまとめられている。講談社文庫の第一作『小説 角栄学校』から読み進めば、今後の選挙に向けての一つの指標になるのではないだろうか。ぜひ、お薦めしたい。


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『小説 角福戦争』表紙 『小説 池田学校』表紙 『自民党・ナンバー2の研究』表紙

最終更新日:2009/04/27(月)

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